世界初のピアノシューズの開発者、リトルピアニストの倉知真由美さんにインタビュー

こんにちは!
とーかいりん男爵こと東海林大介です!
毎度おなじみ、自身のお仕事で活躍していて、とうかいりんと縁がある方に突撃インタビューをするコーナーです。

今回は、ピアノの「ペダリング」に特化した世界初の専用シューズである「ピアノシューズ」を開発した、リトルピアニストの倉知真由美社長です。

注1)この記事は2020年8月に話を伺って、紙で発行している「とうかいりん通信11月号」に掲載したインタビューを編集したものです。

出張前の真由美さんを、羽田空港で捕まえてインタビューしてきました。

注2)とうかいりんの猫背が気になる(笑) 姿勢には自信があったのに・・・気をつけよ(笑)

真由美さんと知り合ったきっかけ

真由美さんとは「お風呂会」友達として始まりました。

注)お風呂会とは、後楽園のラクーアにて、男女それぞれ自由にお風呂に入った後に、ラクーア内の飲み屋さんにおもむろに集まって飲む、という会です。

ちょっと前には真由美さん主催の、常陸牛のBBQにも呼んでいただきましたね。

仕事の話はほとんどしたことなかったので、真由美さんがどんな道のりをたどってきたのか、聞くのを楽しみにしていました。

では、早速始めていきましょう。

【東海林】

「ピアノシューズ」というものを世に生み出して広め続けて、現在もご活躍の様子が伝わってきますが、この仕事は、どんな感じで始められたんですか?

真由美さん】

当時は「娘のためだけに」って考えて作ったんです。

まさか特許を取得するまでのものになるなんて思っていませんでした。

娘は幼稚園の年中あたりで、1000ピースのパズルができちゃったんですよね。

「すごいなぁ、この才能を他にも活かせないかなぁ」って思っていたところで、ピアノを弾かせてみたら、「なんかうまいぞ」ってことがわかったんですよね。

それでピアノ教室に行かせてみたら、幼稚園でバイエルが終わって、小1でショパンのマズルカとか弾いちゃうような子でした。

でも、私の当時の仕事はゲームクリエイター。

音大卒のピアノの先生と、まわりはみんな音大卒の親で、子どもにピアノを教えることができるレベルです。

だから「これからこのピアノ教室についていけるのかな?」って思ったんです。

それとピアノコンクールで入賞させるためには、環境が大事だって思いました。

良いレッスンを受けさせたり、良いドレスを着せたりしました。

ヒールの位置と形が特徴的な「ピアノシューズ」

開発のきっかけ

真由美さん】

10年前くらいの娘が小学生の時のことです。

ショパンコンクールin ASIAのファイナル直前で、ペダルを変化させて音色を豊かにしようということになったのですが、どうもペダリングがうまくいかなかったのです。

で、「ちょっと靴を貸してごらん」て言って、自分の娘の靴が滑らないようにヤスリで削ったり、工夫したんです。

足も短いし押す力もないから、ちゃんとペダリングをするということが課題だったんですよね。

踵を丸く削ることで、力が入るというよりは、微調整がしやすくなるんです。

あと、靴の後端よりも少し前にヒールがあるのは、テコの原理を使って、戻す時にいい感じに切れるようにするためです。

それが第一特許なんです。

湾曲であるとか、その湾曲部分が柔らかい素材であるとか。

難航を極めた工場探し

【東海林】

最初から順調だったんですか?

真由美さん】

もう、大変でしたよ~!

まず立ちふさがったのは「工場探し」の壁ですね。

まずは電話をかけてもかけても、ことごとく断られる、

という状態でした。「お金は?」とか、「経営の経験は?」とか、「販路は?」って聞かれて・・・

「ありません」って。

今なら、その時の自分の実績のなさで、そう聞かれることが当然と分かりますが、そりゃあ、法人でもないし個人事業主ですらない私を相手にしてくれるはずもないですよね。

工場は、お金があれば作ってくれるというものでもなくて。

1回の生産に対してお金を払うというよりは、継続的に生産できる見込みのある企業にしか作ってくれないんです。

しかも「発明品」だったから、売れるかどうかもわからないでしょう。

だからどの工場も、消極的でした。

資金をどうやって集めたのか

【東海林】

資金の調達も必要ですよね?どうしたんですか?

真由美さん】

そうそう。「お金をどうしたもんか・・・」と思ってインターネットで調べていたら、経済産業省(中小企業庁)の創業補助金というのがあったんです。

概要を読んでみたんですが・・・何が書いてあるか全くわからない。

でも、とりあえずこれをやったら突破口になるのではないかと期待して、国の経営相談窓口のよろず支援拠点とか、商工会とか、中小企業振興公社とかに行くようになりました。

だけどまあ、わからないなりにそれを一生懸命に勉強して、2、3ヶ月くらいかかりましたね。

自分で、事業計画書の作成に必要な言葉の意味から調べながらですから。

「利益とは?」とかそういうレベルでした(笑)

【東海林】

本当にイチからのスタートだったんですね。

真由美さん】

そうなんです。

「創業補助金が採択されることが決まって、私の事業計画書もあって、本気である。」

「ちゃんとこれだけのお金を使わないとお金が下りないから、必ず支払います。」

「作ることが決まったらそれに対してお金を支払います。」

「だから作ってください」って100社くらいまわったんです。

お金を用意できると口頭で自信を持って言っても断られる

【東海林】

お金を用意する目途はたったのに、工場の生産はスムーズには決まらなかったんですね。

【真由美さん】

基本的には断られます。

だって、どこの馬の骨だかわからないでしょ。

あと、基本的に転売だから、開発などできないとか。

靴の金型から設計できる会社っていうのがけっこう限られていて。

そんな中、「一緒にやりましょう!」っていう会社がやっと1社見つかったんです。

【東海林】

100社まわって1社ですか!よく途中で諦めませんでしたね。

真由美さん】

創業補助金は、採択されたら、最終的なところまで計画通りにやらないと、お金が下りないんです。

だから、開発を始めて10ヶ月くらいだったかなぁ?補助が下りる予定日が。

それまでに工場にお金を支払って、完成品を作らないと、その補助金が下りなくなってしまうんです。

【東海林】

それに間に合わないと、工場にはお金を支払ったのに、補助金がもらえなくなってしまう?

真由美さん】

そう。10ヶ月でやらないといけなかったんです。

だからもう必死!

大きな転機がやってきた

【東海林】

大きく流れが変わるようなきっかけがあったりしたんですか。

真由美さん】

2015年にピアノシューズの試作品でエントリーして、グッドデザイン賞を取ったことですね。

見切り発射的なエントリーでしたけど、大手百貨店のWEB販路が決まったんです。

その年度は、グッドデザイン賞を受賞したら、ビッグサイトで展示会ができるという特典があったんです。

その展示会でバイヤーと話す機会があって、販売してくれることになったんですよね。

【東海林】

それはすごい!

そういえば、表参道の有名楽器店(超一等地)にもポスターが貼ってあるのを見ましたよ。

真由美さん】

あっ!ご覧になってくれたんですね!

その販路が決まったのは、サンプルシューズを制作している段階で作ったYou Tubeの動画です。

「ピアノシューズというのを作りました」っていう、コンピュータグラフィックスを駆使した動画。

それが、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」への出演のきっかけになったんです。

その番組を見た、全国のペダリングで困っていた人達から、楽器店に問い合わせが殺到したようで。

そのことがきっかけで、楽器店さんから「販売したいです」って言ってきてくれたんです。

テレビ出演で更に大きなチャンス到来

【東海林】

すごいですね!

でも、急に問い合わせが殺到して、一気に作る力はあったんですか?

真由美さん】

一気に作らないといけなかったんです。

工場としては「何百ロット(大量)だったらやりますよ」という感じですから。

でも発注したら、それは売り切らないといけない。

そうしないと在庫の山ってなってしまうから。

ちょうど生産している最中にテレビ出演して、問い合わせがありました。

「今、生産しているところだから、まだ販売準備が整っていません」と伝え、生産中に急いで売価を決定したり、リトルピアニストWEBショップを作成したり、販売店との契約を全部済ませたんです。

【東海林】

なにもかもタイミングがよかったんですね。

真由美さん】

そうなんです。

まさか、サンプルしかない状態で、大型楽器店の販売が決まるなんて、思ってもみませんでした。

テレビってすごいな、って思いましたね。

出演のきっかけはYou Tube

【東海林】

You Tubeは自分でやろう!って思ったんですか。

真由美さん】

それは広告代理店の勧めでした。

「ピアノシューズというものはこの世にないものだから、サンプルでもいいから早めに出さないといけない」って言われて。

当時はまだゲームクリエイター時代の感覚でした。

「ピアノシューズは綿密に計算して作ったいいものだから自信がある」「ホームページに顔を出したくない」「イメージは商品だけ」「私の名前も出したくない」「SNSにも自分の顔を出すなんてありえない」って言ったんです。

だから「商品だけキレイに写してくれればいいです」って。

でも広告代理店の方からは「商品というのは、作った人の顔とか人間性を見て買いたいと思うものだから、良いものを作ったからって売れるものじゃない。それを理解しないと売れないぞ。」って。

そう言ってるのを「はい、すみません」って正座して聞いてました(笑)

私ずっとジャージを着てたんです。

ゲームオタクだったから。

「スーツくらい持ってないのか?」って言われて・・・

スーツを着て、髪をアップして、スカーフを巻いて、少し化粧をして広告代理店に行ったら、「こんなに変わるのか!」って言われて(笑)

そこからは自分を前面に出していくようになりました。

産学連携へ

【東海林】

大学と共同研究中だとか。

真由美さん】

そうなんです。

新商品でヒールが一番高い7.5cmのシューズと、紳士用のピアノシューズで25.5cm以上のものです。

そこで、大学と共同研究して新商品開発をするという流れになりました。

今まではピアノの先生に履いてもらったしりして、踏みやすい位置とか、高さとか、感覚で調整してきたんです。

でも今度は大学が入ることによって、数値化されるんですよね。

筋肉の負担がどれくらいかかるのかとか。

ペダルを操作した時の移動距離とか。

計測をして一番良いところで商品化するんです。

大学の准教授に取り組んでもらっているんですが、「英字論文を出したい」と言ってもらえていて。

論文が出ていると、海外での販売の時等に「大学で研究して、エビデンスが取れている商品」として売り出せるんです。

だから「それは良いことですね」ということになってお願いしました。

最初は研究委託だったんですけど、共同研究になったんです。

【東海林】

ピアニストに対する認知度はどんな感じですか?

真由美さん】

国内の主要ピアノコンクールでの認知度は出てきたかなって思います。

広告をたくさんしていますから。

音楽大学とかそのあたりがこれからですね。

第12回ショパン国際ピアノコンクール5位入賞
ピアニスト 高橋多佳子さん

どんな人に履いてほしいか

【東海林】

どんな人にピアノシューズを履いてほしいですか?

真由美さん】

1.ピアノのペダリングに困っている全世界の人。

2.ピアノのペダリングで音色の変化をつけて音楽表現したい人。

3.ピアノコンクールの入賞を目標としている人。

4.音楽大学附属高校、音楽大学などの入学希望者。

5.将来ピアニストとして生きていく道を選んだ人。

6.世界で活躍するトップピアニスト。

全世界のピアノのペダルに困っているピアノ奏者たちにピアノシューズを履いてもらって、音楽業界のお役に立ちたいと思っています。

サッカー選手にはサッカーシューズがあるように、ピアノ奏者にはピアノシューズが常識の世の中にすることが、リトルピアニストの使命だと思っています。

履けば上達?

【東海林】

ピアノシューズを履けば間違いなく上達すると言えそうですか?

真由美さん】

まず、ピアノのペダリングは、音を繋げたり、音を切ったり、音を響かせたり、柔らかい音に仕上げたりと、音色などを変化させる時に使います。

ペダリングは、ピアノコンクールで評価対象になっているほど重要です。

ピアノシューズを履くとペダルの操作性は上がりますが、ペダルが上手になっても、ピアノが上手になるとは限らないのです。

まずは、「ピアノの音を聞く耳を育ててほしい」と思っています。

「ピアノの耳が育つ」「ピアノの音の響き」が分かるようになります。

「ピアノの音の響き」が分かると、「音をいかに美しく響かせるか」を考えるようになり、最終的に「ピアノのペダリングの重要性」に気が付きます。

その後は「自分の音楽表現をどのようにペダリングで表現するか?」という芸術的なレベルにたどり着き、

「ペダルを絶妙に綿密にコントロールしたい」という気持ちになり、

ここではじめて「思い通りの演奏ができる”ピアノシューズ”が欲しい」となります(笑)

だから、「ピアノのペダル操作に困っていて自分の音楽表現ができない!」って思う人に履いて頂きたいですね。

研究所の予備調査では、筋肉負担が半減するという事が分かっているので、足の筋肉疲労でピアノが長時間弾けなかった方などにもピアノシューズを履いて頂けたらなと思います。

なんせ筋肉負担が半減するから、今よりも2倍練習できるので(笑)

最後にひとこと

【東海林】

最後にひとことお願いします。

真由美さん】

リトルピアニストのピアノシューズは、最初、ピアノも靴づくりもプロではない普通の母親が、ピアノのペダルに困っている娘のためだけに作成したものでした。

そのピアノシューズが、プロのピアニストの方にさえ「こんなものが欲しかった」と言ってもらえるほどに求められるものになるとは、当時、想像もつきませんでした。

身に余る感謝の言葉や、寄せられた様々なご要望に背中を押されるうちに、ピアニスト専用シューズはいつの間にか一つのジャンルとなり、また世界でも例のないものであることにも気づかされました。

リトルピアニストは、ピアノ演奏者の皆様によって磨かれたブランドです。

だからこそ、リトルピアニストは「ピアニストファースト」であり、続けることこそが存在意義だと考えます。

全国ピアノシューズ取扱店舗では、ご試着・ご試弾が可能なので、実際に履いて、新しいピアノのペダリングを体感してください!

1人でも多くの方のピアノとの関わりがより素晴らしいものになることを願っております。

【東海林】

真由美さん、今回は普段聞けないことが本当にたくさん聞けて楽しかったです。

ありがとうございました!

 リトルピアニスト株式会社
◆電話 0297-84-1246
◆住所 茨城県龍ケ崎市4264-1
◆代表取締役 倉知 真由美(くらち まゆみ)
◆HP https://littlepianist.jp/




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