こんにちは!
とーかいりん男爵こと東海林大介です!
今回はNPB(日本のプロ野球)で29年ぶりのホームスチールが「実はホームスチールではないのでは?」という話です。
トップ画像は、先日のマリンスタジアムで球審をした時のものです。
プロ野球では29年ぶりに成功したホームスチール
先日プロ野球でかなり珍しい、そして規則適用としても議論になるプレーがありました。
起きたのは3回裏、2アウト3塁。
三塁ランナーは福岡ソフトバンクホークスの周東佑京選手。
打席には柳田悠岐選手という場面でした。
いわゆる「柳田シフト」が敷かれていて、野手陣は左打者である柳田選手の引っ張り方向へ大きく守備位置を変更。
三塁手も三遊間あたりまで寄っていたようです。
そのため、周東選手はかなり大きなリードを取れる状況になっていました。
そこで周東選手がホームスチールを敢行。
投手が「投球」し、ロッテの捕手・松川選手がホームベースよりも前にへ出て捕球。
そのまま本塁でタッグ(タッチ)にいきました。
タイミングはアウトのようなタッグをかいぐぐって手が先に本塁に触れていたような。
そんなギリギリの判定は「アウト!」
しかし、どこからか現れたこぼれたボールを見て、球審は改めて「セーフ」のジェスチャーをしました。
実際の投球はボール。
そして球審の処置は以下のとおり。
・ホームスチール成功(得点)
・投球は無効
・カウントを1ボール→ノーボール・ノーストライクへ戻す
・柳田選手は打ち直し
ここまでが実際の流れです。
打撃妨害の処置2パターン
ここで一度「打撃妨害の処置」について整理してみます。
一番よくある「打者が振ったバットに捕手のミットが触れた」場合がわかりやすいですね。
その場合の処置は次の2パターンです。
(1)打者を含めた全走者が1つ以上進塁した場合は「打撃妨害はなかったものとみなす」
(2)誰か1人でも1つ以上進塁できなかった場合は、「打者1塁へ」「盗塁していなかった走者を妨害発生時の占有塁に戻す」
という決まりがあります。
(1)のケース以外は審判員は(2)の処置をします。
しかしここでポイントになるのが「監督の選択権」です。
(2)の処置をした後すぐに監督は「その処置ではなく、今のプレイを生かす」旨を球審に通告することができます。
例)ノーアウト3塁で、打撃妨害をされつつ外野に大きな犠牲フライを打ち、3塁走者は悠々得点。
でも審判員は「全走者が進塁していないため」打撃妨害を適用して
・打者を1塁へ
・3塁走者を3塁に戻す。
・無得点
という処置をします。
でも監督は、
・打者アウト
・3塁走者が得点して1点
という状態を続けることを選べるということです。
ここまでがシンプルな打撃妨害の話です。
3塁走者が盗塁をしていた場合の打撃妨害
ちょっとややこしいのが、今回のようなケース。
3塁走者が盗塁をしていた場合の打撃妨害です。
その場合は、「捕手のミットが打者のスイングに触れる」だけに限らないんです。
「ボールを持たない捕手が本塁の上に出た」場合についても打撃妨害となります。
注)「本塁の上」とは捕手側のトガッた角を含めた本塁の上方空間という意味です。
そして今回のような「三塁走者が本塁へ盗塁している場面の打撃妨害は、特別に規定があります。
野球規則6.01(g)です。
この場合は、単なる打撃妨害ではなく、「打撃妨害+ボーク」として二重罰となります。
ボールを持たない捕手がホームベースの上方に出た瞬間に、または打者の体等にふれた瞬間に「ボールデッド」でタイムとなります。
その後、「打者には一塁」「すべての走者に1個の安全進塁権」が与えられます。
コールとしてはこういう順番です。
・タイム!
・(捕手を指して)ザッツ・インターフェアランス!
・(打者を指して)ユー!ファーストベース!
・(投手を指して)ザッツ・ア・ボーク!
・(3塁走者を指して)ユー!スコア!
・(2塁走者がいれば指して)ユー・サードベース!
・(1塁走者がいれば指して)ユー・セカンドベース!
として全走者を1つ進めます。
これはNPBアンパイアスクールで習ったコール&進塁指示です。
この6.01(g)の二重罰に限り・・・
・打者が打とうとしたかに関係なく
・打者がバッターボックスの中にいたかに関係なく
打撃妨害が適用されるというところがポイントです。
更におもしろいのが・・・
投手板を外した投手が捕手に投げる場合は「送球」になるので、それを打者が打った場合は「守備妨害」として打者がアウトになります。
だから(というかこのケースに限らず常に)審判員は4氏ともに、投手が投手板を踏んだ瞬間から投手の動きを注視することが求められるんです。
求められるというか「必須」なのです。
なぜこの二重罰の規定があるのか?
なぜこんな特殊規定があるのでしょうか。
理由は、捕手の心理を考えると分かりやすいです。
三塁ランナーがスタートした。
「あ、これは普通にやったらタッチが間に合わない」
そう思った時に、
「じゃあ前に出て打撃妨害にしてしまえ」
というプレーを成立させないためです。
もし通常の打撃妨害だけなら、
・三塁走者は戻される
・打者が一塁へ行くだけ
となり、1点を防げてしまいます。
つまり、「故意に違反して失点を防ぐ」というズルが成立してしまうわけです。
それを防ぐために、このケースではボークを加え、全走者に1個の進塁権を与える特別規定になっています。
実際のジャッジメントはどうだったのか?
では、今回のジャッジを改めて見てみるとどうでしょう。
まず、打撃妨害は適用されていません。
なぜなら、打撃妨害なら打者には一塁が与えられるはずですが、柳田選手は一塁へ進んでいないからです。
さらに、実際にはボール判定の投球だったにもかかわらず、カウントはワンボールではなく、ノーボール・ノーストライクへ戻されました。
これは、「投球そのものを無効にした」という処置です。
しかし、投手は正しく投手板に触れて(投手板を外していない)投球動作を行っており、正式な投球は成立しています。
にもかかわらず、
・ボールカウントは加算されない
・ホームスチールは成立
・打撃妨害も適用していない
・ボークも宣告していない
という、規則上かなり説明が難しい処置になっています。
つまり今回のプレーは、「打撃妨害+ボーク」を適用するなら、打者は一塁へ進ませなければならない。
逆に、打撃妨害を適用しないなら、投球を無効にしてノーカウントへ戻す根拠がない。
結果として、「野球規則の適用ミスだったのではないか」という見方ができる処置だったということです。
最後に
以前から勉強していて、一生に一度くらいは6.01(g)のこのジャッジメントをしてみたいと思っていました。
でもそう思うと同時に、起こることはないのかもしれないとも思っていました。
ベテランの審判員の先輩に聞いても、そんなの起きたことがないという人ばかりだからです。
でも、実際に起きてしまいましたよね。
2022年のNPBアンパイアスクールで、実際のNPB審判員がどれだけ優秀かを目の当たりにしてきました。
だから、あの規則6.01(g)は当然頭に入っていると思いたい。
でも咄嗟のことで、「投球」を「捕手がホームベースの上どころか前」に出た時点でボールデッドにできなかったのだとしてもです。
その後4氏が集まって協議することもなかったのも不可解です。
誰も疑問に思わなかったのでしょうか。
投手が投手板を外したか、外していないかについては1塁塁審、3塁塁審から見えやすいのです。
明らかに外していない「投球」だということは見えていたはずです。
「送球だとして、捕手がタッグしたボールを落としたからセーフ」という記事もありますが、録画を見ると明らかな投球でした。
「球審が処置できなくても」「4氏の協議をしなかったとしても」、後から、「あれは誤審だったと認める発表もなさそうですね。
それは周東選手の29年ぶりのホームスチールの大記録が、実はホームスチールではなかったということになってしまうのに配慮しているからなのかな?なんて気もします。
いずれにしても、この件で6.01(g)が少しは有名になりましたね。
そうなれば、いずれ試合で適用する日が来ても、「あの周東選手のホームスチール」といえば、揉めずに済む可能性が高まるか高まらないのか。
そんな色々な気持ちをナイマゼにしつつ、今回の審判のつぶやきを終わろうと思います。
いやぁ!野球の規則って、ほんとにほんとに難しいんです。
それをわかった上で、NPBにおいては審判員がいかにプロ中のプロであるかを、アマチュア審判員に対してもリスペクトの念を持って見守っていただける社会になるといいなと思います。
そうすることで、人数不足と言われる審判を少しでも目指す方、興味を持ってくれる方が増えるとうれしいなと思っているからです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。



































































